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歯周病とストレスについて
「歯周病とストレス」は、一見関係がなさそうに見えますが、実は非常に深い関係があります。歯周病は「歯垢(プラーク)」の中に潜む細菌によって引き起こされる感染症ですが、その進行や悪化には、精神的なストレスが大きく関わっていることが多くの研究で明らかになっています。ストレスが歯や歯ぐきに及ぼす悪影響は、大きく分けて「物理的な影響」と「免疫機能への影響」の2つの側面から考えられます。
まず1つ目は、「ストレスによる物理的な影響」です。
人はストレスを感じると、無意識のうちに歯を強く食いしばったり、寝ている間に歯ぎしりをしたりすることがあります。これらの行動は、精神的な緊張を解消するための反応とも言われていますが、歯や歯ぐきにとっては非常に大きな負担になります。
歯を過剰に食いしばると、歯周組織(歯を支える骨や歯ぐき)が圧迫され、炎症や損傷を引き起こすことがあります。さらに、歯の表面や内部に微細なひび(マイクロクラック)が入ると、そこに歯周病菌が入り込み、細菌感染を引き起こす原因にもなります。これが慢性的に続くと、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が徐々に破壊され、歯周ポケットが深くなっていきます。結果として、歯ぐきの腫れや出血、歯のぐらつきなど、歯周病の典型的な症状が現れるのです。
そして2つ目は、「ストレスによる免疫力の低下」です。
私たちの体は、ストレスを感じると「自律神経」「内分泌系」「免疫系」の3つのバランスが乱れます。特に、強いストレスを受け続けると、自律神経のうち交感神経が優位になり、体は常に「緊張モード」に入った状態になります。その結果、ストレスホルモンである「コルチゾール」が多く分泌され、免疫機能が抑制されてしまうのです。
免疫力が低下すると、口の中の細菌に対する防御力が弱まり、歯周病菌が繁殖しやすい環境が生まれます。また、炎症を抑える力も落ちるため、一度発症した歯周病がなかなか治りにくく、慢性化しやすくなります。つまり、ストレスは歯周病の「発症」と「悪化」の両方に深く関わっているのです。
さらに、ストレスによって生活習慣が乱れることも、歯周病を悪化させる要因となります。例えば、睡眠不足や不規則な食生活、喫煙や飲酒の増加などは、体の抵抗力を下げるだけでなく、口腔内環境を悪化させます。とくに喫煙は血流を悪くし、歯ぐきへの酸素供給を妨げるため、歯周病の治りを遅らせる大きな原因となります。
このように、ストレスは直接的・間接的の両面から歯周病に影響を及ぼすため、日常生活の中で「ストレスケア」を意識することがとても大切です。適度な運動や趣味の時間、深呼吸などのリラックス法を取り入れ、心身のバランスを整えるようにしましょう。また、睡眠の質を高めることも免疫機能の維持に効果的です。
もちろん、日々の歯磨きや定期的な歯科検診も欠かせません。ストレスを感じているときほど、歯磨きがおろそかになりやすいものです。ブラッシングだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってプラークをしっかり除去し、清潔な口腔環境を保つことが歯周病の予防につながります。
歯周病は、初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも悪影響を与えることが知られています。近年では、歯周病と糖尿病、心疾患、認知症などの関連も報告されています。ストレスをうまくコントロールすることは、歯と全身の健康を守る第一歩でもあるのです。
中央歯科医院では、患者さま一人ひとりの生活習慣やストレス状況にも配慮しながら、歯周病の予防・治療を行っています。心身の健康をトータルで考えることで、より長く、自分の歯で快適に過ごせるようサポートしてまいります。