コラムcolumn
歯周病で歯がボロボロ!手遅れ・治らないと言われたら
重度の歯周病が「手遅れ」「治らない」と言われたら
歯周病は、歯を失う最も大きな原因のひとつです。特に中高年以降では、むし歯よりも歯周病によって歯を失う人の方が多いとされています。歯周病は初期段階では自覚症状が少なく、気づいた時には「重度」になってしまっているケースも少なくありません。歯科医院で「もう手遅れ」「治らない」と言われて不安を感じている方もいるのではないでしょうか。ここでは、重度の歯周病において本当に治らないのか、またどのような治療や対応が可能なのかについて詳しく解説します。
歯周病の進行と「重度」とはどういう状態か
歯周病は、歯と歯ぐきの間に歯垢(プラーク)が溜まり、細菌が炎症を起こすことで始まります。炎症が進むと歯ぐきが腫れ、出血し、さらに骨(歯槽骨)が溶けていきます。進行段階は大きく「軽度」「中等度」「重度」に分けられます。
- 軽度歯周病:歯ぐきの腫れや出血があるものの、骨の吸収はごく一部。適切なケアで改善しやすい。
- 中等度歯周病:骨の吸収が進み、歯がぐらつき始める。口臭や噛みにくさも出てくる。
- 重度歯周病:歯槽骨の吸収が大きく、歯が大きく動揺し、噛む機能が著しく低下する。膿が出たり、歯ぐきが大きく下がって歯が長く見えることもある。
重度の場合、歯を支える骨が大きく失われているため、保存が難しい歯も少なくありません。この状態で「手遅れ」「治らない」と説明されることがあります。
「手遅れ」と言われる理由
- 歯を支える骨がほとんど残っていない:歯が骨に支えられていないため、揺れが強く、抜け落ちる可能性が高い状態です。
- 歯ぐきの奥まで感染が広がっている:歯周ポケットが深く、細菌が根の奥にまで入り込んでおり、通常の清掃では改善できません。
- 噛む機能を維持できない:数本の歯が重度の場合、全体の噛み合わせや顎関節にも悪影響が出てしまいます。
- 全身に影響するリスクが高い:重度の歯周病は糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎などと深く関わっており、治療の遅れが命に関わるリスクになることもあります。
本当に治らないのか?
「治らない」と言われると絶望的に感じてしまいますが、必ずしも「何もできない」という意味ではありません。正しくは「完全に元通りにはならない」ということです。失われた歯槽骨や歯ぐきは自然には回復しません。しかし、治療や処置によって進行を止めることは可能です。
- 歯を保存できる場合:徹底した歯周基本治療(スケーリング、ルートプレーニング、歯周外科治療など)を行い、炎症を抑えることで長期的に維持できる場合があります。
- 歯を保存できない場合:抜歯が必要になることもありますが、その後はインプラントや入れ歯、ブリッジといった補綴治療で噛む機能を回復することが可能です。
つまり「治らない」というのは、歯そのものが完全に元の状態に戻らないという意味であり、生活の質を回復できる方法は存在します。
重度歯周病に対する主な治療法
- 歯周基本治療:歯石除去、歯周ポケット内の清掃、ブラッシング指導を徹底して行います。
- 歯周外科治療:歯ぐきを切開して奥深くの歯石や感染組織を取り除きます。場合によっては再生療法(エムドゲインなど)で骨や歯ぐきの再生を促すこともあります。
- 抜歯と補綴治療:保存不可能な歯は抜歯を行い、その後にインプラントや入れ歯、ブリッジで機能回復を図ります。
- 全身疾患との連携治療:糖尿病など全身の病気を抱えている場合は、医科と連携して治療を進めることが必要です。
「治らない」と言われたときの心構え
- セカンドオピニオンを受ける:医院によって治療方針は異なるため、他の歯科医師に相談してみるのも一つの方法です。
- 生活習慣を改善する:歯周病は生活習慣病の側面も強いため、禁煙、栄養バランスの改善、十分な睡眠、ストレス軽減が治療の成功に直結します。
- セルフケアを徹底する:歯磨き、フロス、マウスウォッシュなどの毎日のケアを欠かさないことが大切です。
まとめ
重度の歯周病で「手遅れ」「治らない」と言われても、すべてを諦める必要はありません。確かに失われた歯槽骨や歯ぐきを元に戻すことは困難ですが、治療によって進行を止め、残された歯を守り、機能を回復する方法はあります。また、補綴治療を併用することで生活の質を取り戻すことも可能です。大切なのは、現状を正しく理解し、適切な治療と予防に取り組むことです。
歯周病は静かに進行する病気ですが、早期に対策をとれば歯を守ることができます。「手遅れ」と感じたその時からが、これからの口腔と全身の健康を守るためのスタートラインといえるでしょう。