コラムcolumn

歯周病と肥満の関係

先進国では肥満者が増加しており、これは食生活などのライフスタイルの変化によるものとされています。喫煙対策が進んだ先進国では、肥満が健康に最も深刻な問題とされ、喫煙と同等の健康リスクを持つ言われています。肥満は糖尿病、耐糖能障害、脂質代謝異常、高血圧、痛風、冠動脈性疾患、脳梗塞などの病気を引き起こすと報告されています。そして近年では、肥満と歯周病に関連があることがわかってきました。

歯周病と肥満

生活習慣病の一つである歯周病と肥満との関係は、調査によれば、体脂肪率が5%増加するごとに、歯周病のリスクが30%高まることが報告されています。また、上半身肥満、特に内臓肥満が多い人は歯周病の発生率が高く、歯周病の進行度合いとも関係しています。肥満は免疫力を低下させ、脂肪細胞から分泌される物質が歯を支える骨を溶かしたり、毛細血管の循環障害を引き起こすこと考えられています。

現在、肥満は不顕性感染や炎症の状態とされ、歯周病も同様に全身に対して不顕性感染・炎症状態を引き起こすと見なされています。実際、歯周炎患者では炎症の指標が上昇し、歯周治療によってその値が低下することが確認されています。

歯周病は歯を失う原因として最も多く、過半数を超える原因となっています。快適で豊かな人生を送るためには歯の健康が必要です。そのため、歯周病と密接に関わる肥満には十分な注意が必要です。

肥満になると病気になりやすくなる?

以前は脂肪細胞の主な役割は余分なエネルギーの貯蔵庫とされていましたが、現在では脂肪細胞は人体最大の内分泌器官と考えられています。脂肪細胞は体内の代謝機構を調節するために、さまざまな物質を分泌しています。これには動脈硬化や糖尿病を悪化させる悪玉物質と、それらの病気の進行を抑える善玉物質の両方が含まれています。このようなバランスや適切な脂肪量、脂肪細胞のサイズが健康を保つ鍵となっています。

しかし、脂肪細胞が肥大化したり、脂肪の絶対量が過剰に蓄積したり、皮下脂肪と内臓脂肪のバランスが崩れると、インスリンの効果が低下し、糖尿病や動脈硬化、血栓症、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が進行することが分かっています。肥満は肝臓から放出されるHDLコレステロール(善玉コレステロール)を低下させ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を上昇させることで異常脂質血症を引き起こし、血栓を生じやすくします。このような炎症反応は、動脈硬化疾患や虚血性心疾患の進展に関与していると考えられています。

肥満を防ぐ!

食生活

若い時代の食習慣にとらわれず、現在の年齢や体調に応じたエネルギー摂取を心がけることが重要です。特に、食べ過ぎには注意が必要です。また、高脂肪の食事は控えるか、その摂取量を減らすことが推奨されます。さらに、減塩も内臓脂肪の減少に効果的とされています。抗酸化物質を多く含む食事を摂ることも、健康維持に有益です。

食事の時間が短い場合、よく噛んでいない可能性があります。食事はじっくりと時間をかけて噛むことが重要です。噛むことで血糖値の上昇が抑えられ、ホルモンの変化が起きて食欲が低下することがわかっています。また、噛むことで脳が活性化し、認知機能の向上や、唾液の分泌が増えて免疫力が高まるほか、歯や粘膜の健康維持にもつながります。これらの健康効果を得るためには、日常的に歯を守り、しっかりと噛む食生活を心がけましょう。

運動

筋肉量を維持するためには、定期的な運動習慣が非常に重要です。充分な筋肉量があると基礎代謝量が上がり、余分なエネルギーを脂肪として蓄えにくくなります。最適な運動としては、少し息が上がる程度の有酸素運動が推奨されます。

しかし、運動を始める際に体重が多い場合は、膝などへの負担を考慮する必要があります。また、運動習慣がない方も、いきなり激しい運動をするのは避け、ウォーキングなどの軽い運動から始め、徐々に運動量を増やすことが大切です。

運動の効果を最大限に引き出すためには、合計で同じ時間を運動する場合、数回に分けて行うよりも、一度に連続して行う方が効果が高いことがわかっています。ただし、一度に行う運動は体への負担が大きくなるため、初めは分けて運動する方が安全です。たとえば、一回の運動が10~20分であれば、1日2~3回に分けると良いでしょう。

運動に慣れてきたら、早歩きのウォーキングにすることで、通常のウォーキングよりも約2倍のエネルギーを消費することができます。これにより、効率的にエネルギーを消費し、健康を維持することが可能です。